一般社団法人 日本医業承継機構

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コラム

承継開業で低コストの開業が可能に。承継開業と 新規開業の資金を比較

開業を検討している医師にとって、大きなハードルとなるのが資金面の問題です。一からクリニックを新規開業する場合、内装工事費用や医療機器や備品をそろえるための費用、さらには患者さんに認知してもらうための広告宣伝費や、安定して経営を続けていくための運転資金など、莫大な資金が必要となります。

しかし、新規開業ではなく、既存のクリニックを譲り受ける形で開業する「承継開業」であれば、いくつかの費用を大幅に抑えることも可能です。そこで本記事では、承継開業と新規開業における開業資金を比較し、どういった費用項目が抑えられるのかについて解説します。

承継開業と新規開業の開業資金を比較

まずは、承継開業と新規開業で必要な資金を項目ごとに比較してみましょう。

※金額は概算であり、開業する地域や規模、診療科の内容など、さまざまな要件によって変わってきます。不動産条件や開業する診療科については、本記事では「テナント入居の内科」を想定しています。

※上の表の各項目は開業費用の一般的な相場価格を記載しています。不動産費用については、土地建物の取得費用の代わりにテナント契約にかかる費用として敷金、仲介手数料、礼金、前家賃を想定していますが、実際にかかる金額は物件によって増減します。賃貸借契約の承継方法によっては、仲介手数料や礼金が発生しない場合もあります。

各項目における診療科や条件の違いを補足すると、不動産費用、内装工事費用については、開業エリアはもちろん、診療科などによっても費用が変わってきます。例えば、リハビリ室を必要とする整形外科であれば、より広い土地・建物が必要です。医療機器・什器備品費用については、専門的な診療科なら診療内容に沿った大型の医療機器などが必要になる場合も考えられます。

また、承継開業の場合でも、引き継いだクリニックと診療科が異なる場合や、既存の医療機器の老朽化が見られる場合は、医療機器・什器備品費用などが必要です。

承継開業は内装工事や備品、運転資金などの面で費用を抑えられる

以下の表は、承継開業と新規開業の開業費用を比較したものです。

開業する地域や規模、診療科など、さまざまな要件によって金額自体は変動しますが、ほとんどの場合、承継開業のほうが新規開業に比べて費用を抑えられる可能性が高いです。

続いて、承継開業は実際にどういった項目で費用を抑えられるか見てみましょう。

・不動産費用、内装工事費用、医療機器・什器備品費用

承継開業において、既存の建物や設備を引き継げることは最も大きなメリットといえるでしょう。特に、内科から内科への承継など同じ診療科であれば既存の設備を活用しやすく、内装工事や医療機器の入れ替えなどの資金負担も少なくなります。

これらの固定資産で残存簿価がある場合、譲渡額に追加されるのが一般的です。固定資産状況もきちんと確認するようにしましょう。

ただし、建物や設備の老朽化が激しい場合や診療科が異なる場合や、承継開業とはいえ新たなクリニックとして設備や内装を一新したい場合などには、それに応じた内装工事や医療機器の入れ替えが必要です。しかし、それでも新規開業に比べれば、大幅に費用を抑えられるケースが多いでしょう。

・運転資金、広告宣伝費

新規開業では基本的に最初は患者さんがいません。地域の方に認知してもらうために広告宣伝が必要になりますし、患者さんが一定数確保できて黒字化するまでに一定期間は赤字で活動するためにそれを見越した運転資金が必要になります。しかし、承継開業は既存クリニックの患者さんを引き継げるため、開業当初からある程度安定した経営が見込めます。また看板を作り直して広告を出したり、ホームページを作ったりといった広告宣伝は必要ですが、初動で地域の方々に認知してもらうためにかける費用は、新規開業よりも抑えられます。

・のれん代(営業権)等

上記のようなメリットがある一方、承継開業の場合にのみかかる費用もあります。それは、既存クリニックとの譲渡契約を結ぶためののれん代(営業権)費用です。譲渡契約を結ぶ際には、承継を仲介するコンサルタントや弁護士などに支払う費用も発生します。

後継者不足により、第三者承継を考えるクリニックが増加

本コラムの第1回「医業承継の現状を知り、第三者承継も含めた選択肢を考える」 でもお伝えしたように、医療業界全体で後継者不足、経営者の高齢化が深刻化しています。承継者が見つからず、休止・廃止を選ばざるを得ないクリニックも増えているのが現状です。そうした背景から、子どもをはじめとした親族への承継以外に、M&A(合併・買収)や、開業を検討している医師への第三者承継を選択するクリニックも増加傾向にあります。

医業承継コンサルタントを活用すれば、より詳細に新規開業との資金比較などを行いながら、承継開業について情報を集めることが可能です。資金面で悩んでいる方や、承継開業も含めて検討されたい方などは、こうした仲介業者を利用しながら情報収集することをおすすめします。

承継開業も視野に入れることで開業の実現性が高まる

開業資金はクリニックの場所や規模、診療科などの条件によって異なるものです。しかし、新規開業と承継開業を比較すると、承継開業のほうが費用を抑えられる可能性が高く、その差は何千万円単位になる場合もあります。

また、開業時の費用面だけでなく、既存クリニックの患者さんを引き継げるため、立ち上げ時からある程度安定した経営を見込めることも、承継開業のメリットです。医療業界全体での後継者不足から第三者承継を検討するクリニックも増えてきているため、開業を考えている方は、新規開業だけでなく承継開業も選択肢に入れると、より開業の可能性が開けるのではないでしょうか。

新規開業、承継開業それぞれについての開業後収支シミュレーションや患者推移などの事業性の内容については次回コラムでより詳しく解説する予定です。

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