「いつから始める?」医業承継の理想的な準備期間とスケジュール
なぜ医業承継には「時間」が必要なのか

「最近、体力の衰えを感じることが増えたが、クリニックはいつまで続けられるだろうか?」、 「もし自分が急に倒れたら、患者さんやスタッフはどうなるのか?」
― このような「不安」が頭をよぎることはありませんか?
長年、地域医療を支えてきた院長先生にとって、「リタイア」や「承継」はこれまでの歩みを締めくくる重大な節目となります。それは人生の集大成であるとともに地域医療への責任を整理する大切な決断が必要とされます。
ただし、いざ承継しようと決断しても、「準備不足」により、選択肢が狭まってしまう先生方が多数いることもひとつの事実としてあります。「体力が落ちてきたからすぐ辞めたい」、「まだまだ続けるつもりだったのに急に体調を崩してしまった」といった状況になってから動き出すと、大切に築いてきたクリニックを安価で譲渡せざるを得ない状況になったり、最悪の場合は、「閉院」を選択せざるを得なくなるケースも少なくありません。
本コラムでは、後悔しないために私たちが推奨する「理想的な承継スケジュール」と、なぜ「3〜5年前」からの準備が必要なのかを詳しく解説します。
医業承継の全体像:平均的な期間は「1年〜2年」
初めに知っておいていただきたいのは、承継の検討を本格的に始めてから実際に完了するまでは、全てが順調に進んだ場合でも最短で1年、平均して1年半から2年の期間がかかるという点です。
上記はあくまで「手続き」に必要な期間に過ぎません。満足のできる条件で承継を実現し、納得できる形でバトンを渡すためには、その前段階の「準備」にどれだけ時間をかけられるかが重要となってきます。

理想的な準備期間は「3年前〜5年前」から
私たちは、承継を希望する時期の3年から5年前には準備を開始することをお勧めしています。その理由は大きく3つあります。
① クリニックの価値を高める期間
クリニックを高い価値で譲渡するには、財務面や組織体制をしっかりと整備し、事業の質を引き上げておくことが重要です。
- 財務健全化:直近3期分の業績が評価を左右
収支状況を把握、不必要な支出や借入を整理、財務体質を改善
- 定期モニタリング:患者数、再診率、稼働率などを定期的にモニタリング
定点観測結果に応じて集患対策など実施
- 退職慰労金:医療法人の場合、負債と見なされ、金額妥当性、支給時期、相続対策との整合、
資金繰りの対策が必要、対策次第で税負担が数百万円~数千万円の影響あり
- スタッフ体制:承継後も継続勤務してもらえるような安定した職場作り
スタッフ雇用規程やマニュアルの整備
- 老朽化対策: 必要な修繕を行い、清潔感を維持、DX化の検討
- 集患対策: HPの見直し、SEO・MEO対策
これらは一朝一夕にはできません。2〜3年かけて改善することで、買い手から見ても魅力的なクリニックとなります。
② 税務対策・相続対策の実行
医療法人の場合、出資持分の評価額が高くなると、承継時に多額の税金が発生することがあります。退職慰労金の積み立てや持分放棄、贈与などを計画的に進めるには、数年単位の準備が必要です。親子承継か第三者継承にするかで変わりますので、承継の形態を検討することも重要な要素です。
③ 「縁」を待つための心理的余裕
医業承継は金額の条件だけでなく、理念や方針の相性が大切という意味で「結婚」に似ています。価値観が合う相手と出会えるかどうかは、ある程度運やタイミングにも左右されます。期限が迫ってくると、焦りから妥協が生じやすくなりますが、数年の余裕があれば、納得できる相手が現れるまでじっくりと待つことが可能です。
もちろん、出会いが早すぎ、逃してしまうこともありますので、しっかりと検討していくことが重要です。
現状把握から承継までの具体的なスケジュール
ステップ1:現状把握と出口設計(3年前〜2年前)
- 簡易算定: 専門家・仲介会社に必要書類を提出して、簡易査定により自分のクリニックの評価価格を知る。
- ライフプランの策定: 引退後にどのような生活を送りたいか、いくら資金が必要かを整理する。
- 親族・スタッフへの意向確認: 息子・娘は継ぐ意思があるのか、承継してくれる勤務医はいないといった選択肢の整理
ステップ2:専門家依頼とマッチング(2年前〜1年前)
第三者承継を選択する場合、専門家・仲介会社に依頼します。
- 事業価値算定: 専門家・仲介会社に詳細資料を提出して、事業価値を算定、
譲渡条件を取り決め、ノンネームシートを作成。
- 買手候補の探索・選定:ノンネームシートを用いて買手候補を探索。
- トップ面談: 候補者と実際に会い、人柄や診療方針を確認。
- 基本合意書の締結: 大まかな譲渡条件(価格、時期)を合意。
ステップ3:DDと最終契約(1年前〜6ヶ月前)
- デューデリジェンス(DD): 買い手側による詳細な調査(財務・法務・労務)。
隠れた債務がないか(法人の場合)
- 最終譲渡契約: 譲渡対価や従業員の雇用維持などを正式に契約。
ステップ4:行政手続きと引き継ぎ(6ヶ月前〜承継当日)
- 行政届出: 保健所や厚生局への「廃止届」と「開設届」を提出。
- 患者様への告知: 院内掲示や挨拶状を通じ、丁寧な引き継ぎを実施。
準備が遅れた場合のリスク
もし準備を怠り、短期間で承継を進めようとすると、以下のようなリスクが発生します。

例えば、「患者離れ」リスクに関しては、承継後も数ヶ月間は旧院長も引継ぎも兼ねてクリニックに残り診療を行うことで患者の離脱率が大幅に下がるという対処方法もあります。
まとめ:まずは「自院の価値」を知ることから
「まだ先のこと」と考えていても、気がつけば時間はあっという間に過ぎてしまいます。
医業承継は、先生自身の第二の人生のためだけでなく、患者様、そして共に働いてきたスタッフを守るための「最後の大切な役目」でもあります。
私たちは、先生が守り続けた地域医療の灯を、最適な形で次世代へ繋ぐお手伝いをします。
日本医業承継機構では、まだ具体的に引退を決めていない段階でのご相談も歓迎しております。もちろん、ご相談いただいたからといって承継を急かすことは一切ありません。先生のお気持ちに寄り添いながら、最適な選択ができるようサポートすることを大切にしています。
医業承継を成功させるための第一歩として、まずは、情報整理のために現在のクリニックの事業価値を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。


【診断結果の目安】
チェック数が
0〜1個:まずは現状把握から始めましょう。
2〜3個:具体的な候補者探しや条件整理の段階です。
4個: 「実践フェーズ」理想的な承継に向けて、交渉や契約の準備が整っています。
(最後に)
本コラムを読んで「まだ早い」と感じられた先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、承継を成功に導くうえで最も重要な要素は「時間」です。少しでも不安や気になる点があれば、日本医業承継機構までお気軽にお問い合わせください。