開業医がハッピーリタイアを実現するために必要な準備とは?
開業医としてのキャリアを「ハッピーリタイア」で締めくくることは、多くの医師が目指す目標のひとつです。しかし、その実現には早期からの計画と準備が必要不可欠で、なかには承継成功とならず、やむを得ず閉院するケースも少なくありません。 今回は「開業医のハッピーリタイア」をテーマに、目指すメリットや承継失敗のよくある原因、成功に向けて必要な準備について詳しく解説します。リタイア後も豊かで充実した生活を送りたい、地域医療の存続に貢献したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
医療業界における「ハッピーリタイア」とは
ハッピーリタイアとは、経営者が潤沢な老後資金を確保したのち、早い段階で退職(リタイア)することを意味します。タイミングは業績が好調な時期が良いといわれており、このタイミングでリタイアする場合は「次世代の経営者にスムーズにバトンタッチできる」「開業医として達成感と満足感を持ってリタイアを迎えられる」などのメリットを得られます。
なお、開業医におけるハッピーリタイアの手法としては、自身の子どもなど親族に承継する「親族内承継」、院内に勤務する医師に承継する「院内承継」、親族や院内医師以外の第三者に承継する「第三者承継」の3つが主流です。近年は、後継者不足によって「M&Aによる第三者承継」を目指すケースが増加傾向にあります。
第三者承継によってハッピーリタイアを目指すメリット
第三者承継によるハッピーリタイアを考えるにあたり「スムーズに承継できるのか」と不安を感じる方もいるでしょう。なかには「見ず知らずの医師に承継することに抵抗がある」などの理由で承継ではなく閉院を選ぶケースも見られますが、第三者承継によってハッピーリタイアを目指すことには大きなメリットがあります。
次に、特に注目したい2つの魅力を詳しく見ていきましょう。
- ハッピーリタイアに必要な資金を得られる
1つめのメリットは、リタイア後の生活を安心して送るために必要な資金を確保できることです。M&Aによって第三者にクリニックを売却できれば、その対価として創業者利益を獲得できます。経営が好調な時期であれば高い評価額で売却を期待でき、リタイア後に豊かな生活を送るための基盤づくりを効率的に行えるでしょう。
- 患者さん・スタッフを引き継げる
自院に通う患者さんや雇用しているスタッフを引き継げることも、第三者承継によってハッピーリタイアを目指す魅力です。新しい院長への引き継ぎをしっかりと行うことで、患者さんは引き続き同じクリニックで安心して医療を受けられます。閉院によって患者さんが行き場を失ってしまうのを回避できるのはもちろん、地域医療の存続に貢献できることも大きなポイントです。 また、承継によってスタッフを引き継ぐことができれば、長年クリニックの経営を支えてきてくれた医師や看護師の雇用を守れるため、安心感を持ってリタイアできます。
開業医がハッピーリタイアできない原因のほとんどが“準備不足”
前述のように、第三者承継によるハッピーリタイアには大きなメリットがあり、実際に承継を成功させてリタイア後に第二の人生を謳歌している方はたくさん存在します。しかし、承継先を見つけられずに閉院となるケースも少なくありません。失敗する原因として多く見られるのが、承継に向けた具体的な準備を行っていなかったり、そもそも承継について検討していなかったりといった「準備不足」です。
その背景には、近年における医師の高齢化も大きく関係しています。厚生労働省[TN1] が2022年に実施した調査によると、年齢別に見た医師数は「50~59歳」が全体の約20%と全年代の中で高い割合を占めており、医療業界全体として医師の高齢化が加速化している印象です。「体力の続く限り院長を続けたい」と高齢まで院長を続ける開業医が多く、急な体調不良や衰えなどでやむを得ず閉院となるケースも増えています。
そういった突発的な休診や閉院によって、すでに患者さんやスタッフが離散している状態では、第三者承継を行っても失敗に終わるケースが多いです。第三者承継によるハッピーリタイアを成功させ、医業承継することで地域医療への貢献を果たすためには、入念な準備と計画的な進行が不可欠といえるでしょう。
ハッピーリタイアを成功させるために準備しておきたいこと
ハッピーリタイアを成功に導くポイントは、以下の3つが挙げられます。
・クリニックを売却するタイミングを見極める
M&Aによる医業承継においては、クリニックの経営状態を客観的に判断し、ベストな売却時期をつかむことが重要です。経営が好調で収益が安定している時期に売却を検討することによって高値での交渉がしやすくなるほか、買い手も見つかりやすくなり、スムーズな承継を目指せます。
・経営環境を整えておく
次の経営者が円滑に運営できるよう、クリニックの経営環境を整えておくこともハッピーリタイアの成功に欠かせません。特に注意したいのが、スタッフの管理です。場合によっては、経営者の交代が原因で退職してしまったり、仕事に対するモチベーションが下がって業績悪化を招いたりする可能性があります。
そのような事態を回避するためには、経営者交代に関する情報を早期に共有することが大切です。円滑な引き継ぎに向けた具体的な取り組みや承継後の雇用についてきちんと説明し、スタッフの不安を取り除くことに注力しましょう。
・医業承継の仲介サービスやコンサルタントを利用する
M&Aを円滑に進めてハッピーリタイアを成功させるには、医業承継に特化したM&A仲介サービスやコンサルタントといった専門家へ相談するのもひとつの方法です。医療業界の専門知識と豊富な経験を持つアドバイザーに仲介してもらうことで、以下のようなメリットを得られます。
・市場のトレンドや競合クリニックの動向に精通しているため、最適な戦略を提案してもらえる
・クリニックの評価額を専門的に分析し、最適な売却価格を設定してもらえる
・広範なネットワークを有していることから、適切な承継先を紹介してもらえる
・必要書類の準備や契約手続き、交渉においてサポートを得られる
医業承継には専門知識や綿密な準備を要するため、計画から実行までのすべてを経営者1人で行うことは難しいでしょう。医業承継に特化したM&A仲介サービスやコンサルタントを利用し、上記のようなサポートを得ながら実行できれば、安心かつスムーズな承継を目指せます。
ハッピーリタイアの実現に向けて早期に決断・準備を
開業医におけるハッピーリタイアには、引退後に豊かな生活を送るための資金を確保できたり、自院の大切な患者さんやスタッフを引き継げたりといったメリットがあります。親族内または院内に後継者がいない場合は、M&Aによる第三者承継によってハッピーリタイアを目指すとよいでしょう。
その場合は、できるだけ早期に決断し、準備期間を十分に確保した上で計画的に進めることが大切です。特に「経営が好調な時期に売却する」「次の経営者が円滑に運営できるように経営環境を整えておく」といったポイントを意識することで、満足のいく医業承継を実現しやすくなります。
また、医業承継に特化したM&A仲介サービスやコンサルタントを利用することも、ハッピーリタイアの成功に向けた大きな一歩になるでしょう。ぜひ経験豊富なアドバイザーを味方に付け、二人三脚でのスムーズな医業承継を目指しましょう。